労働時間制度の種類

さまざまな労働時間制度

みなし労働時間制

裁量労働のみなし時間制

裁量労働のみなし時間制とは、労働遂行や労働時間の配分に関して、裁量性が高く、労働の量(労働時間)よりも労働の質(内容・成果)に着目して報酬を支払われる労働者に関して、労使協定や労使委員会の決議で一定のみなし労働時間を定めれば、実際の労働時間にかかわらず、それだけの時間労働したものとみなす制度です。
要するに、労働者が実際に労働した時間数に関係なく、労使協定等で定める時間数労働したものとみなす制度です。
裁量労働のみなし時間制のもとでは、労働者が実際に労働した時間数に関係なく、労使協定で定める時間数労働したものとみなされます。労働者が実際の労働時間数を挙げてみなし時間を大きく超えることを反証しても、裁量労働のみなし時間制の効果を覆すことはできません。もっとも、みなし労働時間が実労働時間から乖離する場合については、業務の遂行に必要とされる時間が時とともに変化すると考えられ、一定期間ごとに見直すことが適当であることから協定の有効期間が定められたものとされています。みなし制が定められていたとしても実労働時間から乖離する状況においては、裁量労働のみなし時間制は適法性を失い、実労働時間が適用されると主張することも考えられますので、協定が定められていたとしても諦めずにご相談下さい。

事業場外のみなし時間制

事業場外労働のみなし時間制とは、取材記者、外回り営業社員などの常態的な事業場外労働や出張などの臨時的な事業場外労働に労働者が従事する場合、使用者の具体的な指揮命令が及ばず、労働時間の把握(算定)が困難となることが多いため、労働時間の算定を適正なものとするためのみなし労働時間制度のことです。
これは、労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときは、実際に必要とされる時間労働したものとみなされます。労働時間の一部について事業場外で業務に従事した日における労働時間は、別途把握した事業場内における時間とみなし労働時間制により算定される事業場外で業務に従事した時間を合計した時間となります。
事業場外労働のみなし時間制の適用により、実際の労働時間の多寡を問わず、事業場内に従事する労働者に適用される所定労働時間又は通常必要時間労働したものとみなされ、所定労働時間みなしの場合に所定労働時間を超えて労働したことを、反証しても、主張にかかる賃金請求は認められないことになります。
もっとも、事業場外のみなし時間制の場合に労働者がその業務を遂行するためには通常、所定労働時間を超える時間が必要である場合には、当該通常必要時間を前提の賃金請求をする余地はありますので、諦めずにご相談下さい。

みなし時間制の残業代請求

みなし労働時間制の残業代請求をお考えの方は、みなし労働時間制の残業代請求をご覧下さい。

変形労働時間制

変形労働時間制とは、一定の期間を単位として、週あたりの平均労働時間が週法定労働時間(40時間)を超えないことを条件に、所定労働時間が1週(40時間)又は1日(8時間)の労働時間を超えることを許容する制度です。具体的には、1か月単位(労働基準法32条の2)、1年単位(労働基準法32条の4)、1週間単位(労働基準法32条の5)があります。
業務の性質上交代労働が必要であったり、月末と月初で業務の繁閑があって、所定労働時間を不規則に配分する必要がある場合に対応するための制度です。
変形労働時間制が採用されると、使用者が、労働者を特定の週、日、月において、予め変形されたとおりに法定労働時間を超えて労働時間が定められても、その部分は割増の対象となる時間外労働にはならずに、所定賃金と対価性のある所定労働時間内の労働となるため、残業代請求(割増賃金請求)は認められません。
もっとも、変形労働時間制が採用されても、割増賃金請求が一切認められないわけではありません。休日労働又は深夜労働の割増賃金請求に対しては、変形労働時間制が適用される場合も、使用者は、労働基準法37条に基づき、割増賃金の支払い義務を負います。

変形労働時間制の残業代請求

変形労働時間制の残業代請求をお考えの方は、変形労働時間制の残業代請求をご覧下さい。

年俸制

年俸制とは、賃金の全部又は相当部分を労働者の業績等に関する目標達成度を評価して年単位に認定する制度です。
一般的には、プロ野球選手のように、成績に応じて毎年大きく上下する形ではなく、いわゆる目標管理の手法を用いて、能力給・業績給としての実質を持ちます。すなわち、年俸制の対象者に毎年の年間目標を設定し、年度末にその達成度を評価して、翌年の目標と年間給与を定めるという運用です。
もっとも、年俸制が採用されている場合でも残業代請求(割増賃金請求)は認められます。年俸制を採用していても残業代請求(割増賃金請求)が発生しないと認められるのは、みなし時間制(裁量労働のみなし労働時間制、事業場外のみなし労働時間制)が行われ、かつ、みなし時間制が8時間以内という労働基準法の基準内におさまっている場合に限られます。「うちの会社は年俸制をとっているから…」とお考えの方も残業代請求(割増賃金請求)の余地は十分にありますので、ご相談下さい。

年俸制の残業代請求

年俸制の残業代請求をお考えの方は、年俸制の残業代請求をご覧下さい。

歩合給

労働基準法27条は、「出来高払制その他の請負制で使用する労働者に対し、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。」と定めています。従って、保障給を持たないいわば完全歩合制は、労働基準法27条に反し、認められません。
そして、労働基準法37条は、基本的にすべての手当を残業代請求(割増賃金請求)の基礎に含める建前をとっています。残業代請求(割増賃金請求)の基礎から除外される賃金は、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超えるごとに支払われた賃金です(労働基準法37条、労働基準規則21条)。
したがって、歩合給も残業代請求(割増賃金請求)の基礎となります。

歩合給の残業代請求

歩合給の残業代請求をお考えの方は、歩合給の残業代請求をご覧下さい。

固定残業代(定額払制)

定額払制とは、平均的な時間外労働時間数を当該事業場における過去の実績等から認定し、その時間数を若干上回る時間に相当する割増賃金を定額で支給する制度です。
定額払制がそもそも労働基準法37条に反し許されないかが問題となります。しかし、労働基準法は労働条件の最低基準を定めるものですから、毎月支給される時間外手当が、実際の労働時間数から算出される法定額以上の割増賃金を支払う限りは労働基準法37条には反しないと考えられます。
また、定額払制には、時間外手当として支給される場合の他、時間外手当を基本給に組み込んで支給する方法もあります。その場合には、基本給の中でも、時間外手当に相当する部分を明確に区別してあることが前提となります。
もっとも、定額払制が採用される場合でも実際の法定時間外労働が定額の時間外手当に相当する時間を超えた場合には、当該部分については、残業代請求(割増賃金請求)が認められます。定額払制が採用されているからといって諦めずにご相談下さい。

固定残業代の残業代請求

固定残業代の残業代請求をお考えの方は、それぞれの給与形態に合った残業代請求をご覧下さい。

管理監督者

労働基準法41条は、労働者が従事する業務の性質から労働基準法の労働時間規制を及ぼすことが適当でない場合について、労働時間、休憩時間及び休日に関する適用の除外を認めています。特に問題となるのが、管理監督者(労働基準法41条2号)の該当性です。
管理監督者の該当性は、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいい、名称にとらわれず、職務内容、責任と権限、勤務態様等に関する実態に即し、賃金等の待遇面にも留意して判断されます。
管理監督者について、労働時間規制が及ばないとされている理由は、管理監督者は、経営者と一体の地位にあり、重要な職務と責任を有しているために、職務の性質上、一般労働者と同様の労働時間規制になじまず、勤務や出退社について自由裁量を持つため、厳格な労働時間規制がなくとも保護に欠けることはないと考えられているからです。また、管理監督者にあたる人物には、管理職手当ないし役職手当等の特別手当が支給され、その地位にふさわしい待遇が与えられていることからも、労働時間規制の適用が除外される理由です。
管理監督者制の判断は(1)職務の内容、権限及び責任の程度(経営者と一体的な立場で仕事をしているか否か)、(2)実際の勤務態様における労働時間の裁量の有無、労働時間管理の程度(出社退社や勤務時間について厳格な規制を受けていないかどうか)、(3)待遇の内容、程度(その地位にふさわしい待遇がなされているか否か)といった要素を総合的に考慮して判断されます。
管理監督者の判断は、実態に即して行われますから、「店長」、「マネージャー」等の役職にあり、割増賃金が認めない扱いを受けている方も、ご相談下さい。

管理監督者の残業代請求

管理監督者の残業代請求をお考えの方は、管理職の残業代請求をご覧下さい。

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